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最新技術の開発に関わる企業(銘柄)を特許出願に基づき先読み

株式投資に関する情報サイトです。先端技術に焦点を当て、特許出願数が多く、評価できる銘柄を紹介しています。

【バイオマス関連株1】バイオマス技術開発において開発に注力する開発企業10選|特許データで選ぶ特許銘柄

 これまで再生可能エネルギーと言われる太陽光発電に関わる技術や風力発電に関わる技術について取りあげました。

 そのような中でバイオマスに関わる技術も再生可能エネルギーの一つとしても挙げられます。

 さらに、バイオマスはその中でも炭素資源を供給できる唯一のエネルギーであり、電気だけでなく燃料や化学品まで生み出すことができます。

 このまま石油が枯渇した場合、医薬品やプラスチックなどが製造できなくなります。

 バイオマスはこれに代替し得る点で存在意義が大きいと言えます。

 バイオマス関連の開発に関わる有望な企業はどこなのか?

 特許出願件数から探ってみました。

 

 結論(簡易版)は以下の通りです。

<特許銘柄TOP10>(2000年-2023年)(非上場を含む)

1 大日本印刷 【7912】
2 三菱重工業 【7011】
3 トヨタ自動車 【7203】
4 IHI 【7013】
5 東レ 【3402】
6 本田技研工業 【7267】
7 産業技術総合研究所 
8 ザイレコ,インコーポレイテッド 
9 三菱化学(三菱ケミカルグループ)【4188】
10 JFEスチール 【5411】

 ただし、上記結論は特許検索条件などによって変わってくるものです。詳細については下記をご確認ください。

 

 

1.本評価の概要

 本評価は特許情報に基づき、対象技術の開発に関わる銘柄(本サイトでは「特許銘柄」と呼びます。)を客観的に導き出そうとするものです。

 本評価については以下の記事で紹介しています。

【開発力評価メソッド】特許出願に関する情報から技術開発に関わる銘柄を評価

 簡単に説明すると、以下の考え方に基づいています。

開発開始時期:最初の出願が古い→早くから開発に着手(古いほど評価高い
開発継続性:出願が継続→技術開発が続いている(継続するほど評価高い)
開発成果:出願件数が多い→開発成果が出ている(成果が多いほど評価高い)

 すなわち、どこよりも早くから出願され(①)、毎年出願されていて(②)、その件数が多い(③)ほど、評価される銘柄だと考えます。

 これらは、技術開発によって技術課題を解決する道筋が見えると、その成果が特許出願されるという前提に立っています。

 

 本サイトでは個々の特許は評価対象にしていません。

 本サイトは特許出願件数を指標にして技術を生み出し続ける力(開発力)を評価するものです。

<注意点>
 特許出願件数に基づく企業の開発力の評価には以下の問題点がありますので十分にご注意ください。
・単に出願件数が多いだけの企業を過大評価することがあります。
・個々の特許を評価対象としていないので、価値の高い技術や特許を保有する企業を過小評価することがあります。
・現実には開発成果が特許出願されない場合があります。
・対象技術が特許出願された場合であっても、特許検索において情報漏れが生じることがあります。
・特許検索において対象技術との関連性の低いノイズ情報を拾ってしまうことがあります。
・対象技術の市場性や対象企業における影響は別個判断が必要です
(まとめると、ざっくりとした評価であり、間違いもあります、ということです。)

 

2.特許銘柄の評価方法

2.1 評価対象

 バイオマス全般に関連する技術が対象です。

 

2.2 特許検索ツール

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

2.3 検索条件

 文献種別:国内文献

 検索キーワード:

  検索項目(ⅰ) 請求の範囲「バイオマス バイオ燃料 バイオプラスチック バイオケミカル」

 検索条件:検索条件(ⅰ)

 日付指定:出願日 20000101~20231231

 

3.特許銘柄の評価結果

3.1 期間別の出願件数の推移

 2000年~2007年、2008年~2015年、2016年~2023年の3つの区間に分けました。

 各期間における総出願人数と総出願件数は以下の通りです(出願人数は筆頭出願人のみカウント)。

 

 時間経過とともに出願件数、出願人数ともに増加しています。

 

 各期間の出願件数上位企業は以下の通りです。

(1)2000年~2007年

 出願人数749のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表1です。

<表1>

三菱重工業 7.6 件/年
産業技術総合研究所 5.4 件/年
新日鐵住金 4.5 件/年
三菱化学 3.9 件/年
東芝 3.0 件/年

 

(2)2008年~2015年

 出願人数1259のうちの上位5社の推移です。 

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表2です。

<表2>

トヨタ自動車 10 件/年
東レ 9.1 件/年
本田技研工業 7.8 件/年
三菱重工業 7.6 件/年
IHI 7.4 件/年

 

(3)2016年~2023年

 出願人数1481のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表3です。

<表3>

大日本印刷 39 件/年
凸版印刷 7.0 件/年
DIC 6.1 件/年
三菱ケミカル 6.1 件/年
モンサント テクノロジー 5.8 件/年

 

(4)出願上位企業の推移

 下の表4は表1~表3をまとめたものです。

<表4>

  2000年~2007年 2008年~2015年 2016年~2023年
1 三菱重工業
(7.6 件/年)
トヨタ自動車
(10 件/年)
大日本印刷
(39 件/年)
2 産業技術総合研究所
(5.4 件/年)
東レ
(9.1 件/年)
凸版印刷
(7.0 件/年)
3 新日鐵住金
(4.5 件/年)
本田技研工業
(7.8 件/年)
DIC
(6.1 件/年)
4 三菱化学
(3.9 件/年)
三菱重工業
(7.6 件/年)
三菱ケミカル
(6.1 件/年)
5 東芝
(3.0 件/年)
IHI
(7.4 件/年)
モンサント テクノロジー
(5.8 件/年)

 

3.2 全対象期間での出願件数

 下図は全対象期間における出願件数上位10社です。

 各期間における出願件数の平均値を結んだ線であらわしています。

 

 上図の大半の企業の出願件数は直近で減少傾向にある中、大日本印刷だけ出願件数を増加させています。 

 

 各期間の平均出願件数を下の表5にまとめました。

 全期間におけるトータル出願件数が多い順に上から表示しています。

 括弧内のパーセントは他社を含めた総出願件数に対する割合です。

<表5>

    平均出願件数
    2000年-2007年 2008年-2015年 2016年-2023年
1 大日本印刷 1.0 件/年
(0.5%)
6.9 件/年
(1.5%)
39 件/年
(7.6%)
2 三菱重工業 7.6 件/年
(3.5%)
7.6 件/年
(1.6%)
3.3 件/年
(0.6%)
3 トヨタ自動車 2.9 件/年
(1.3%)
10.4 件/年
(2.2%)
1.3 件/年
(0.2%)
4 IHI 2.3 件/年
(1.0%)
7.4 件/年
(1.6%)
4.5 件/年
(0.9%)
5 東レ 0.4 件/年
(0.2%)
9.1 件/年
(1.9%)
4.4 件/年
(0.9%)
6 本田技研工業 0.5 件/年
(0.2%)
7.8 件/年
(1.6%)
2.6 件/年
(0.5%)
7 産業技術総合研究所 5.4 件/年
(2.5%)
5.3 件/年
(1.1%)
0 件/年
(0.0%)
8 ザイレコ 0 件/年
(0.0%)
4.9 件/年
(1.0%)
5.1 件/年
(1.0%)
9 三菱化学(三菱ケミカルグループ) 3.9 件/年
(1.8%)
4.5 件/年
(1.0%)
1.0 件/年
(0.2%)
10 JFEスチール 1.3 件/年
(0.6%)
5.9 件/年
(1.2%)
1.9 件/年
(0.4%)

 次に、上表に示されるデータを上記1の考え方に照らしてみます。

 ①開発開始時期

 9社(ザイレコ以外)が2000年-2007年には出願しています。 

 

 ②開発の継続性

 9社(産業技術総合研究所以外)が出願を継続しています(ザイレコは2008年-2015年から出願継続)。

 

 ③開発成果

 大日本印刷の出願件数が最多です。次が三菱重工業です。

 

 トータル出願件数は以下の通りです。

<表6>

大日本印刷 372 件
三菱重工業 148 件
トヨタ自動車 116 件
IHI 113 件
東レ 111 件

 

4 まとめ:特許銘柄TOP10

 表5に基づく評価は以下の通りです。

 ①開発の開始時期・・・9社(ザイレコ以外)が早期から出願しています。

 ②開発の継続性・・・9社(産業技術総合研究所以外)の継続性が確認されます。

 ③開発成果・・・大日本印刷がリードしています。

 

 上記①の観点だと9社(ザイレコ以外)が評価できます。

 上記②の観点だと9社(産業技術総合研究所以外)が評価できます。 

 上記③の観点も含めると相対的に大日本印刷の開発力が高いです。

 

 これらをまとめると以下の通りです。

<表7>

    出願情報
    ①開始時期 ②継続性 ③成果
1 大日本印刷 【7912】 372 件
(3.9%)
2 三菱重工業 【7011】 148 件
(1.5%)
3 トヨタ自動車 【7203】 116 件
(1.2%)
4 IHI 【7013】 113 件
(1.2%)
5 東レ 【3402】 111 件
(1.2%)
6 本田技研工業 【7267】 87 件
(0.9%)
7 産業技術総合研究所    85 件
(0.9%)
8 ザイレコ    80 件
(0.8%)
9 三菱化学(三菱ケミカルグループ)【4188】   75 件
(0.8%)
10 JFEスチール 【5411】 72 件
(0.8%)

 上記①の〇は2000年~2007年に出願が確認されたもの
 上記②の〇は出願の継続性が確認されたもの
 上記③成果の割合は総出願数に対するもの

 

5.ご参考

 以下、個々の特許出願明細書中の記載などを参考に技術情報を整理しました。

5.1 バイオマスとは

 動植物などから生じた有機性資源で再生可能なものの総称です。

 具体例として木材、稲わら、家畜ふん尿、食品廃棄物、藻類などが挙げられます。

 化石資源(石油・石炭・天然ガス)も生物由来ですが、人間の時間スケールでは再生できないためバイオマスには含まれません。

 

5.2 バイオマスの利用

 バイオマスの用途として発電がありますが、それ以外にも多様な用途があります。

 ・エネルギーとしての利用

  発電(バイオマス発電)や燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガス)として利用されます。

 ・素材としての利用

  容器、包装、部品などのプラスチックや化学工業の原料として利用されます。

 ・環境改善としての利用

  廃棄物処理や土壌改良剤(例:炭)として利用されます。

 

 さらに、バイオマスの種類と用途で下表のように整理されます。

<表8>

種類 具体例 用途例
木質系バイオマス 木材、林地残材、製材所の端材、間伐材、木くず 発電用チップ
木質ペレット
ボイラー燃料
建材
農業系バイオマス 稲わら、麦わら、もみ殻、トウモロコシ茎葉、さとうきびバガス 発電
飼料
バイオエタノールの原料
畜産系バイオマス 家畜ふん尿、鶏ふん バイオガス発電
堆肥化による農業利用
廃棄物系バイオマス 食品廃棄物、下水汚泥、紙くず、都市ごみ バイオガス
堆肥化
廃棄物発電
藻類系バイオマス 微細藻類(クロレラ、スピルリナなど)、海藻 バイオ燃料(藻類油→(化学処理)→バイオディーゼル)
高機能素材
食品添加物

 

5.3 バイオマス技術を投資目線で見た場合

 ChatGPTに聞いてみました。

 以下が回答です(表9)。

<表9>

利用形態 主な用途 投資視点(着目点) メリット リスク/課題 投資妙味
発電 バイオマス発電(木質ペレット・廃棄物燃焼など) - 政策依存度(FIT制度)- 燃料調達安定性- 発電効率・排ガス対策 - 安定収益(固定買取制度)- 脱炭素電源として一定需要 - 政策変更リスク- 燃料コスト増- 技術的革新性は小さい 短中期の安定収益型
燃料 バイオエタノールバイオディーゼルバイオジェット燃料(SAF) - 国際規制(航空・船舶向け)- 製造コスト競争力- 原料調達(廃油・藻類など) - 脱炭素必須燃料- 国際ルールで需要拡大- 航空・海運で必須 - 食料との競合- コスト高- EV化で陸上需要縮小 中期成長ドライバー
素材・化学品 バイオプラスチックバイオ化学品(バイオエタノール由来化学品など) - 規制強化(プラ削減)- ブランド価値・ESG評価- 大手企業との提携状況 - 循環型経済に合致- EU・日本で規制追い風- 長期的な市場拡大 - 高コスト- 石油系代替品との競争- 生分解性・リサイクル適合性課題 長期的潜在力大

 

 ChatGPTによると、発電は短期的で、燃料は中長期的、素材・化学品は長期的な視点でとらえることができそうです。

 

 冒頭でも述べましたが、化石燃料が枯渇してそうな1000年後くらいを考えると、人類的にバイオマスは燃料や素材・化学品として大きな価値がありそうです。

 

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報

・資源エネルギー庁 

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/biomass.html

 

     

     

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