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【特許銘柄/エアコン関連2】冷媒技術の特許出願動向から選定した主要企業10選

 前回に続きエアコン技術について取りあげます。

 前回記事:【特許銘柄/エアコン関連1】エアコン関連技術の特許出願動向から選定した主要企業10選

 前回はエアコン技術全般についてでした。

 今回は冷媒技術に絞りました。

 冷媒技術の開発に関わる有望な企業はどこなのか?

 特許出願件数から探ってみました。

 

 結論(簡易版)は以下の通りです。

<特許銘柄TOP10>(2000年-2023年)(非上場を含む)(パナソニックはパナソニックIPマネジメントに含めてカウント)

1 パナソニックIPマネジメント 
2 ダイキン工業 【6367】
3 三菱電機 【6503】
4 デンソー 【6902】
5 サンデン 【6444】
6 三洋電機 
7 日立アプライアンス 
8 イー・アイ・デュポン 【DD】
9 昭和電工 【4004】(レゾナック・ホールディングス)
10 豊田自動織機 【6201 】

 ただし、上記結論は特許検索条件などによって変わってくるものです。詳細については下記をご確認ください。

 

 

1.本評価の概要

 本評価は特許情報に基づき、対象技術の開発に関わる銘柄(本サイトでは「特許銘柄」と呼びます。)を客観的に導き出そうとするものです。

 本評価については以下の記事で紹介しています。

【開発力評価メソッド】特許出願に関する情報から技術開発に関わる銘柄を評価

 簡単に説明すると、以下の考え方に基づいています。

開発開始時期:最初の出願が古い→早くから開発に着手(古いほど評価高い
開発継続性:出願が継続→技術開発が続いている(継続するほど評価高い)
開発成果:出願件数が多い→開発成果が出ている(成果が多いほど評価高い)

 すなわち、どこよりも早くから出願され(①)、毎年出願されていて(②)、その件数が多い(③)ほど、評価される銘柄だと考えます。

 これらは、技術開発によって技術課題を解決する道筋が見えると、その成果が特許出願されるという前提に立っています。

 

 本サイトでは個々の特許は評価対象にしていません。

 本サイトは特許出願件数を指標にして技術を生み出し続ける力(開発力)を評価するものです。

<注意点>
 特許出願件数に基づく企業の開発力の評価には以下の問題点がありますので十分にご注意ください。
・単に出願件数が多いだけの企業を過大評価することがあります。
・個々の特許を評価対象としていないので、価値の高い技術や特許を保有する企業を過小評価することがあります。
・現実には開発成果が特許出願されない場合があります。
・対象技術が特許出願された場合であっても、特許検索において情報漏れが生じることがあります。
・特許検索において対象技術との関連性の低いノイズ情報を拾ってしまうことがあります。
・対象技術の市場性や対象企業における影響は別個判断が必要です
(まとめると、ざっくりとした評価であり、間違いもあります、ということです。)

 

2.特許銘柄の評価方法

2.1 評価対象

 エアコンの冷媒に関連する技術が対象です。

 

2.2 特許検索ツール

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

2.3 検索条件

 文献種別:国内文献

 検索キーワード:

  検索項目(ⅰ) 請求の範囲「自然冷媒 低GWP 二酸化炭素 炭化水素 プロパン アンモニア イソブタン」

  検索項目(ⅱ) 請求の範囲「冷媒 媒体」

  検索項目(ⅲ) 明細書「エアコン 空調 空気調和」

  検索項目(ⅳ) FI「F04 F24 F25 F28」 

 検索条件:検索条件(ⅰ) AND 検索条件(ⅱ)AND 検索条件(ⅲ)AND 検索条件(ⅳ)

 日付指定:出願日 20000101~20231231

 

3.特許銘柄の評価結果

3.1 期間別の出願件数の推移

 2000年~2007年、2008年~2015年、2016年~2023年の3つの区間に分けました。

 各期間における総出願人数と総出願件数は以下の通りです(出願人数は筆頭出願人のみカウント)。

 

 出願人数、総出願件数ともに減少傾向です。技術市場も冷えきっている?

 

 各期間の出願件数上位企業は以下の通りです。

(1)2000年~2007年

 出願人数139のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表1です。

<表1>

パナソニック 43 件/年
ダイキン工業 19 件/年
デンソー 16 件/年
三洋電機 16 件/年
三菱電機 14 件/年

 

(2)2008年~2015年

 出願人数114のうちの上位5社の推移です。 

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表2です。

<表2>

パナソニックIPマネジメント 22 件/年
三菱電機 21 件/年
パナソニック 17 件/年
ダイキン工業 12 件/年
サンデン 4.4 件/年

 

(3)2016年~2023年

 出願人数92のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表3です。

<表3>

ダイキン工業 16 件/年
パナソニックIPマネジメント 6.8 件/年
三菱電機 6.5 件/年
ザ ケマーズ カンパニー 4.6 件/年
ハネウェル・インターナショナル 3.1 件/年

 

(4)出願上位企業の推移

 下の表4は表1~表3をまとめたものです。

<表4>

  2000年~2007年 2008年~2015年 2016年~2023年
1 パナソニック
(43 件/年)
パナソニックIPマネジメント
(22 件/年)
ダイキン工業
(16 件/年)
2 ダイキン工業
(19 件/年)
三菱電機
(21 件/年)
パナソニックIPマネジメント
(6.8 件/年)
3 デンソー
(16 件/年)
パナソニック
(17 件/年)
三菱電機
(6.5 件/年)
4 三洋電機
(16 件/年)
ダイキン工業
(12 件/年)
ザ ケマーズ カンパニー
(4.6 件/年)
5 三菱電機
(14 件/年)
サンデン
(4.4 件/年)
ハネウェル・インターナショナル
(3.1 件/年)

 

3.2 全対象期間での出願件数

 下図は全対象期間における出願件数上位10社です。

 各期間における出願件数の平均値を結んだ線であらわしています。

 (全期間に関しては、パナソニックはパナソニックIPマネジメントでカウント)

 

 上図の大半の企業の出願件数は減少傾向です。 

 

 各期間の平均出願件数を下の表5にまとめました。

 全期間におけるトータル出願件数が多い順に上から表示しています。

 括弧内のパーセントは他社を含めた総出願件数に対する割合です。

<表5>

    平均出願件数
    2000年-2007年 2008年-2015年 2016年-2023年
1 パナソニックIPマネジメント 43 件/年
(23%)
22 件/年
(22%)
6.8 件/年
(11%)
2 ダイキン工業 19 件/年
(10%)
12 件/年
(13%)
16 件/年
(26%)
3 三菱電機 14 件/年
(7.2%)
21 件/年
(21%)
6.5 件/年
(10%)
4 デンソー 16 件/年
(8.7%)
3.6 件/年
(3.7%)
0.8 件/年
(1%)
5 サンデン 13 件/年
(7.0%)
4.4 件/年
(4.5%)
0 件/年
(0.0%)
6 三洋電機 16 件/年
(8.6%)
0.6 件/年
(0.6%)
0 件/年
(0.0%)
7 日立アプライアンス 5.0 件/年
(2.7%)
2.6 件/年
(2.7%)
0 件/年
(0.0%)
8 イー・アイ・デュポン 3.4 件/年
(1.8%)
2.6 件/年
(2.7%)
0.3 件/年
(0.4%)
9 昭和電工 5.8 件/年
(3.1%)
0 件/年
(0.0%)
0 件/年
(0.0%)
10 豊田自動織機 4.1 件/年
(2.2%)
0.9 件/年
(0.9%)
0.3 件/年
(0.4%)

 次に、上表に示されるデータを上記1の考え方に照らしてみます。

 ①開発開始時期

 全10社が2000年-2007年には出願しています。 

 

 ②開発の継続性

 パナソニックIPマネジメント、ダイキン工業、三菱電機、デンソー、イー・アイ・デュポン、豊田自動織機が出願を継続しています。

 

 ③開発成果

 パナソニックIPマネジメント の出願件数が最多です。次がダイキン工業です。

 

 トータル出願件数は以下の通りです。

<表6>

パナソニックIPマネジメント 568 件
ダイキン工業 384 件
三菱電機 327 件
デンソー 166 件
サンデン 141 件

 

4 まとめ:特許銘柄TOP10

 表5に基づく評価は以下の通りです。

 ①開発の開始時期・・・全10社とも早期から出願しています。

 ②開発の継続性・・・パナソニックIPマネジメント、ダイキン工業、三菱電機、デンソー、イー・アイ・デュポン、豊田自動織機の継続性が確認されます。

 ③開発成果・・・パナソニックIPマネジメントがリードしています。

 

 上記①の観点だと全10社が評価できます。

 上記②の観点だとパナソニックIPマネジメント、ダイキン工業、三菱電機、デンソー、イー・アイ・デュポン、豊田自動織機が評価できます。 

 上記③の観点も含めると相対的にパナソニックIPマネジメントの開発力が高いです。

 

 これらをまとめると以下の通りです。

<表7>

    出願情報
    ①開始時期 ②継続性 ③成果
1 パナソニックIPマネジメント  568 件
(20%)
2 ダイキン工業 【6367】 384 件
(14%)
3 三菱電機 【6503】 327 件
(12%)
4 デンソー 【6902】 166 件
(5.9%)
5 サンデン 【6444】   141 件
(5.1%)
6 三洋電機    134 件
(4.8%)
7 日立アプライアンス    61 件
(2.2%)
8 イー・アイ・デュポン 【DD】 50 件
(1.8%)
9 昭和電工 【4004】(レゾナック・ホールディングス)   46 件
(1.6%)
10 豊田自動織機 【6201 】 42 件
(1.5%)

 上記①の〇は2000年~2007年に出願が確認されたもの
 上記②の〇は出願の継続性が確認されたもの
 上記③成果の割合は総出願数に対するもの

 

5.ご参考

 以下、個々の特許出願明細書中の記載などを参考に技術情報を整理しました。

5.1 冷媒とは

 冷媒は、室内機と室外機を循環し、熱を放出または吸収する媒体となるものです。

 歴史的には、下表の上から下へ(ⅭFⅭ→HCFC→HFC→低GWP冷媒)と代替されています。

CFC Chlorofluorocarbon(クロロフルオロカーボン)(一般に「フロン」)
含有元素 塩素(Cl)、フッ素(F)、炭素(C)
特徴 安定・無毒・高性能
問題点 オゾン層破壊(モントリオール議定書で全廃へ)
HCFC(R-22など) Hydrochlorofluorocarbon(ハイドロクロロフルオロカーボン)(代替フロンの一種)
含有元素 水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、炭素(C)
特徴 オゾン破壊係数が低下
問題点 依然としてオゾン層に悪影響(段階的廃止)
HFC(R-410A, R-32 など) Hydrofluorocarbon(ハイドロフルオロカーボン)(代替フロンの一種)
含有元素 水素(H)、フッ素(F)、炭素(C)
特徴 オゾン層破壊なし
問題点 地球温暖化係数(GWP)が高い
低GWP冷媒 Global Warming Potential(地球温暖化係数)

 

5.2 低GWP冷媒

 下表は低GWP冷媒についてまとめたものです。

冷媒 系統 化学式 含有元素 GWP 特徴
R-32 HFC CH₂F₂ C, H, F 675 主流、弱可燃
R-1234yf HFO C₃H₂F₄ C, H, F ≈1 自動車空調、低GWP
R-1234ze HFO C₃H₂F₄ C, H, F ≈7 冷媒・発泡剤
CO₂ (R-744) 自然冷媒 CO₂ C, O 1 高圧、ヒートポンプ
プロパン (R-290) 自然冷媒 C₃H₈ C, H 3 高可燃性、小型機器
アンモニア (R-717) 自然冷媒 NH₃ N, H 0 毒性あり、大型設備

 

 ここで、GWPは冷媒ガスなどの温室効果を CO₂(二酸化炭素)=1 を基準にした相対的な比較値です。

 例えば、GWP=675(R-32)だと、そのガス1 kgが100年間でCO₂ 675 kgと同じ温室効果を持つことを意味します。

 GWP<150だと、EU規制や日本の省エネ基準で、環境に優しいとされる目安だと言われています(150~750で既存冷媒の置き換えの妥協ライン)。

 

 また、上表の冷媒、R-1234yfとR-1234zeは化学式は同じですが、分子構造が異なります(いわゆる異性体です)。

  R-1234yf R-1234ze(E)
構造 CF₃–CF=CH₂
y= cis/trans異性体(主にtrans)
CF₃–CH=CHF
ze= cis型とtrans型が存在
沸点 -29 ℃ -19 ℃
圧力 高め(R-134aに近い) 低め
冷媒特性 自動車用A/C向け(R-134a代替) 冷凍機やチラー用(低圧系代替)
可燃性 微燃性 微燃性、yfよりやや安全寄り

 特に、R-1234yfは自動車エアコンという大規模市場の代替冷媒であり今後注目?

 

5.3 低GWP冷媒の普及のインパクトがあるのは?

 低GWP冷媒の普及の影響が大きいのは、冷媒メーカーでしょうか?それともエアコンメーカーでしょうか?ChatGPTにぶつけてみました。

 回答は以下の通りです。

項目 化学メーカー(冷媒製造側) 空調メーカー(機器製造側)
事業ポジション 代替冷媒の開発・製造元 冷媒を利用する製品メーカー
株価インパクトの性質 直接的(冷媒需要増=売上増) 間接的・相対的(対応力によるシェア変動)
新冷媒採用時の効果 ・特許による独占利益
・販売量急増で収益拡大
・価格支配力を持てる
・対応の早さで市場シェア拡大
・規制適合でブランド力向上
リスク要因 ・製造コスト高(HFO系など)
・安全性・規制認可の遅れ
・規制対応の遅れ=販売機会損失
・開発コスト増(設計変更、試験対応)
投資妙味 短期的に株価直撃しやすい 中長期的に優勝劣敗が出る

 短期的には化学メーカー、中長期的には空調メーカーへの影響が大きいという感じの回答でした。

 

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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報

 

 

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