特許スカウター

最新技術の開発に関わる企業(銘柄)を特許出願に基づき先読み

先端技術に焦点を当て、特許出願数が多くて評価できる銘柄(特許銘柄)を発信中

【特許銘柄/風力発電2】洋上風力発電の特許出願動向から選定した主要企業10選

 先の記事で風力発電についてでした。

 前回記事:【特許銘柄/風力発電1】風力発電の特許出願動向から選定した主要企業10選

 さらに絞って、ポテンシャルが大きい洋上風力発電について見ていきます。

 洋上風力発電に有望な企業はどこなのか?

 特許出願件数から探ってみました。

 

 結論(簡易版)は以下の通りです。

<特許銘柄TOP10>(2000年-2022年)(非上場を含む)

1 三菱重工業 【7011】
2 日立製作所 【6501】
3 ヴォッベン プロパティーズ 
4 NTN 【6472】
5 東芝 
6 アロイス・ヴォベン 
7 ゼネラル・エレクトリック 【GE】
8 ヴェスタス 【VWS】
9 シーメンス 【SIE】
10 シンフォニアテクノロジー 【6507】

 ただし、上記結論は特許検索条件などによって変わってくるものです。詳細については下記をご確認ください。

 

 

1.本評価の概要

 本評価は特許情報に基づき、対象技術の開発に関わる銘柄(本サイトでは「特許銘柄」と呼びます。)を客観的に導き出そうとするものです。

 本評価については以下の記事で紹介しています。

【開発力評価メソッド】特許出願に関する情報から技術開発に関わる銘柄を評価

 簡単に説明すると、以下の考え方に基づいています。

開発開始時期:最初の出願が古い→早くから開発に着手(古いほど評価高い
開発継続性:出願が継続→技術開発が続いている(継続するほど評価高い)
開発成果:出願件数が多い→開発成果が出ている(成果が多いほど評価高い)

 すなわち、どこよりも早くから出願され(①)、毎年出願されていて(②)、その件数が多い(③)ほど、評価される銘柄だと考えます。

 これらは、技術開発によって技術課題を解決する道筋が見えると、その成果が特許出願されるという前提に立っています。

 

 本サイトでは個々の特許は評価対象にしていません。

 本サイトは特許出願件数を指標にして技術を生み出し続ける力(開発力)を評価するものです。

<注意点>
 特許出願件数に基づく企業の開発力の評価には以下の問題点がありますので十分にご注意ください。
・単に出願件数が多いだけの企業を過大評価することがあります。
・個々の特許を評価対象としていないので、価値の高い技術や特許を保有する企業を過小評価することがあります。
・現実には開発成果が特許出願されない場合があります。
・対象技術が特許出願された場合であっても、特許検索において情報漏れが生じることがあります。
・特許検索において対象技術との関連性の低いノイズ情報を拾ってしまうことがあります。
・対象技術の市場性や対象企業における影響は別個判断が必要です
(まとめると、ざっくりとした評価であり、間違いもあります、ということです。)

 

2.特許銘柄の評価方法

2.1 評価対象

 洋上風力発電に関連する技術が対象です。

 本記事では着床式、浮体式の区別はしていません。

 また、開発パーツの区別もしていません。

 

2.2 特許検索ツール

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

2.3 検索条件

 文献種別:国内文献

 検索キーワード:

  検索項目(ⅰ) FI「F03D B63B」

  検索項目(ⅱ) 請求の範囲「タービン 発電装置 発電機 発電システム」

  検索項目(ⅲ) 請求の範囲「風力」

 検索条件:検索条件(ⅰ) AND 検索条件(ⅱ) AND 検索条件(ⅲ)

 日付指定:出願日 20000101~20221231

 

3.特許銘柄の評価結果

3.1 期間別の出願件数の推移

 2000年~2007年、2008年~2015年、2016年~2022年の3つの区間に分けました。

 各期間における総出願人数と総出願件数は以下の通りです(出願人数は筆頭出願人のみカウント)。

 

 出願件数、出願人数ともに2008年-2015年の期間にピークがあります。

 これは先の記事の風力発電全体で見た場合と傾向が同じです。

 

 各期間の出願件数上位企業は以下の通りです。

(1)2000年~2007年

 出願人数646のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表1です。

<表1>

三菱重工業 44 件/年
ヴォッベン プロパティーズ 14 件/年
日立製作所 13 件/年
NTN 6.4 件/年
シーメンス 6.4 件/年

 

(2)2008年~2015年

 出願人数790のうちの上位5社の推移です。 

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表2です。

<表2>

三菱重工業 61 件/年
日立製作所 37 件/年
東芝 20 件/年
ソニー 18 件/年
ヴォッベン プロパティーズ 18 件/年

 

(3)2016年~2022年

 出願人数531のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表3です。

<表3>

日立製作所 16 件/年
ヴォッベン プロパティーズ 16 件/年
NTN 9.7 件/年
三菱重工業 6.4 件/年
ヴェスタス 5.9 件/年

 

(4)出願上位企業の推移

 下の表4は表1~表3をまとめたものです。

<表4>

  2000年~2007年 2008年~2015年 2016年~2022年
1 三菱重工業
(44 件/年)
三菱重工業
(61 件/年)
日立製作所
(16 件/年)
2 ヴォッベン プロパティーズ
(14 件/年)
日立製作所
(37 件/年)
ヴォッベン プロパティーズ
(16 件/年)
3 日立製作所
(13 件/年)
東芝
(20 件/年)
NTN
(9.7 件/年)
4 NTN
(6.4 件/年)
ソニー
(18 件/年)
三菱重工業
(6.4 件/年)
5 シーメンス
(6.4 件/年)
ヴォッベン プロパティーズ
(18 件/年)
ヴェスタス
(5.9 件/年)

 全期間にわってランクインしているのは三菱重工、日立製作所です。 

 

3.2 全対象期間での出願件数

 下図は全対象期間における出願件数上位10社です。

 各期間における出願件数の平均値を結んだ線であらわしています。

 

 各期間の平均出願件数を下の表5にまとめました。

 全期間におけるトータル出願件数が多い順に上から表示しています。

 括弧内のパーセントは他社を含めた総出願件数に対する割合です。

<表5>

    平均出願件数
    2000年-2007年 2008年-2015年 2016年-2022年
1 三菱重工業 12 件/年
(6.6%)
44 件/年
(17.1%)
6.4 件/年
(3.3%)
2 日立製作所 3.1 件/年
(1.7%)
13 件/年
(5.1%)
16 件/年
(8.2%)
3 ヴォッベン プロパティーズ 0.0 件/年
(0.0%)
14 件/年
(5.5%)
16 件/年
(8.1%)
4 NTN 7.4 件/年
(4.0%)
6.4 件/年
(2.5%)
9.7 件/年
(5.0%)
5 東芝 1.4 件/年
(0.8%)
5.4 件/年
(2.1%)
3.6 件/年
(1.9%)
6 アロイス・ヴォベン 6.8 件/年
(3.7%)
2.9 件/年
(1.1%)
0.0 件/年
(0.0%)
7 ゼネラル・エレクトリック 1.5 件/年
(0.8%)
5.0 件/年
(1.9%)
2.7 件/年
(1.4%)
8 ヴェスタス 2.1 件/年
(1.2%)
0.8 件/年
(0.3%)
5.9 件/年
(3.0%)
9 シーメンス 0.8 件/年
(0.4%)
6.4 件/年
(2.5%)
0.1 件/年
(0.1%)
10 シンフォニアテクノロジー 4.6 件/年
(2.5%)
0.8 件/年
(0.3%)
0.0 件/年
(0.0%)

 

 次に、上表に示されるデータを上記1の考え方に照らしてみます。

 ①開発開始時期

 三菱重工、日立製作所、NTN、東芝、アロイス・ヴォベン、ゼネラル・エレクトリック、ヴェスタス、アロイス・ヴォベン、シーメンスが2000年-2007年には出願しています。

 

 ②開発の継続性

 最初の出願から各期間いずれも出願しているのは、三菱重工、日立製作所、ヴォッベン プロパティーズ、NTN、東芝、ゼネラル・エレクトリック、ヴェスタス、シーメンスです。

 

 ③開発成果

 総出願件数では三菱重工です。次が日立製作所です。

 直近の期間である2016年-2022年では、三菱重工の平均出願件数は減少、日立製作所の平均出願件数は増加しています。

 

 トータルの出願件数は以下のとおりです。

<表6>

三菱重工業 495 件
日立製作所 242 件
ヴォッベン プロパティーズ 222 件
NTN 178 件
東芝 79 件

 

4 まとめ:特許銘柄TOP10

 表5に基づく評価は以下の通りです。

 ①開発の開始時期・・三菱重工、日立製作所、NTN、東芝、アロイス・ヴォベン、ゼネラル・エレクトリック、ヴェスタス、シーメンスが2000年-2007年には出願

 ②開発の継続性・・・三菱重工、日立製作所、ヴォッベン プロパティーズ、NTN、東芝、ゼネラル・エレクトリック、ヴェスタス、シーメンスは出願継続

 ③開発成果・・・総数では三菱重工、直近の期間では日立製作所の出願が多い

 

 これらをまとめると以下のとおりです。

<表7>

    出願内容
    ①開始時期 ②継続性 ③成果
1 三菱重工業 【7011】 〇  〇  495 件
(10.1%)
2 日立製作所 【6501】 〇  242 件
(5.0%)
3 ヴォッベン プロパティーズ    〇  222 件
(4.6%)
4 NTN 【6472】 〇  178 件
(3.6%)
5 東芝 

79 件
(1.6%)
6 アロイス・ヴォベン    77 件
(1.6%)
7 ゼネラル・エレクトリック 【GE】 〇  〇  71 件
(1.5%)
8 ヴェスタス 【VWS】 〇  〇  64 件
(1.3%)
9 シーメンス 【SIE】 58 件
(1.2%)
10 シンフォニアテクノロジー 【6507】     43 件
(0.9%)

上記①の〇は2000年~2007年に出願が確認されたもの
上記②の〇は最初の出願から各期間における出願の継続が確認されたもの
上記③成果の割合は総出願数に対するもの

 

5.ご参考

 以下、個々の特許出願明細書中の記載などを参考に技術情報を整理しました。

5.1 洋上風力発電の方式

 洋上風力発電の方式には大きく分けて以下の2種類があります。

(1)着床式

 風車の基礎構造物を海底に直接設置し固定する方式です。

 陸上の風力発電の延長線上にある技術で海底に杭を打ち込んだり、重力式の巨大なコンクリート構造物を設置したりして風車を支えます。

(2)浮体式

 風車を乗せた浮体構造物を海面に浮かべ、海底に設置したアンカー(係留設備)で位置を保持する方式です。

 日本の沖合は水深が深い場所が多いため日本での導入拡大が期待されています。

 

5.2 方式の比較

 着床式と浮体式を比較したものを以下に示します。

<比較表>

項目 着床式洋上風力発電 浮体式洋上風力発電
仕組み 風車基礎を海底に直接固定し風車を支える 風車を浮体構造物に乗せ海底にアンカーで係留して海面に浮かべる
適用水深 比較的浅い海域(一般的に〜50m程度まで) 深い海域(50m超〜数百m)でも設置可能
技術成熟度 技術的に確立 技術開発が進展中であり実証段階から商業運転への移行期
設置コスト 一般的に浮体式より低い(水深が浅い場合) 一般的に着床式より高いが深水域では唯一の選択肢となる
設置場所 大陸棚など海底が比較的浅く平坦な地域 日本のような海底が急峻な深水域の沖合に適する
安定性 強固な基礎により安定 浮体構造と係留システムで安定性を確保(動揺を抑制する技術が重要)
基礎の種類 モノパイル、ジャケット、重力式、三脚(トライポッド)など バージ、セミサブマーシブル、スパー、TLP(テンションレグプラットフォーム)など
主な利点 実績が豊富で信頼性が高い より沖合の良好な風況を活用可能
主な課題 水深が深い場所には適用できない 高コスト、係留システムの複雑性

 

5.3 浮体式の出願状況

 浮体式の技術開発の進展の方が気になるところです。

 以下は、浮体式に関する特許出願状況についてまとめたものです(上記2.3の検索条件において、さらに請求項に「浮体」というワードを含めた場合の検索結果)。

 まだ件数が少なく、これから開発の進展が期待されます。

 

 

 

<2000年-2022年の出願件数>

1 三菱重工業 24 件
2 日立製作所 21 件
3 戸田建設 15 件
4 エムエイチアイ ヴェスタス 12 件
5 海上技術安全研究所 11 件
6 五洋建設 10 件
7 清水建設 10 件
8 日立造船 10 件
9 エアロディーン コンサルティング 9 件
10 三井造船 9 件

 

<関連記事>

・風力発電の記事

【特許銘柄/風力発電1】風力発電の特許出願動向から選定した主要企業10選

・バイオマス関連の記事

【特許銘柄/バイオマス関連1】バイオマス技術の特許出願動向から選定した主要企業10選

【特許銘柄/バイオマス関連2】バイオマス発電の特許出願動向から選定した主要企業10選

【特許銘柄/バイオマス関連3】バイオマス(藻類利用)の特許出願動向から選定した主要企業10選

【特許銘柄/バイオマス関連4】バイオ燃料の特許出願動向から選定した主要企業10選

・その他エネルギー関連の記事

【特許銘柄/原子力関連】原子力開発の特許出願動向から選定した主要企業10選

 

 

<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報

<留意事項>
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈、投資判断などは読者ご自身の責任でお願いいたします。