電気自動車や水素自動車など、どのように乗り物が発展しても必要となるのがタイヤです(タイヤのない実用的な自動車があらわれるとしても何百年以上先の未来?)。
車がハイテクになるほど、そのパワーを地面に伝えるタイヤの重要性は増しています。
次世代の自動車などに使用されるタイヤに関して有望な企業はどこなのか?
特許出願件数から探ってみました。
結論(簡易版)は以下の通りです。
ここで、本記事における『有望企業』とは、対象技術の開発時期、継続性および蓄積の3指標から将来の市場独占や他社に対する参入障壁を築けると判断される上位企業(TOP10にランクインする企業)を指します。
<特許銘柄TOP10>(2000年-2023年)(非上場を含む)(出願人「コンパニー・ゼネラール・デ・エタブリッスマン・ミシュラン」を「ミシュラン本社」、出願人「ソシエテ・ド・テクノロジー・ミシュラン」を「ミシュラン・テクノロジー」と表記を変えています。)
| 1 | ブリヂストン 【5108】 |
| 2 | 住友ゴム工業 【5110】 |
| 3 | 横浜ゴム 【5101】 |
| 4 | TOYO TIRE 【5105】 |
| 5 | ミシュラン本社 【ML】 |
| 6 | グッドイヤー 【GT】 |
| 7 | トヨタ自動車 【7203】 |
| 8 | ミシュラン・テクノロジー |
| 9 | デンソー 【6902】 |
| 10 | 本田技研工業 【7267】 |
ただし、上記結論は特許検索条件などによって変わってくるものです。詳細については下記をご確認ください。
1.本評価の概要
本評価は特許情報に基づき、対象技術の開発に関わる銘柄(本サイトでは「特許銘柄」と呼びます。)を客観的に導き出そうとするものです。
本評価については以下の記事で紹介しています。
【開発力評価メソッド】特許出願に関する情報から技術開発に関わる銘柄を評価
簡単に説明すると、以下の考え方に基づいています。
① 開発開始時期:最初の出願が古い→早くから開発に着手(古いほど評価高い)
② 開発継続性:出願が継続→技術開発が続いている(継続するほど評価高い)
③ 開発成果:出願件数が多い→開発成果が出ている(成果が多いほど評価高い)
すなわち、どこよりも早くから出願され(①)、毎年出願されていて(②)、その件数が多い(③)ほど、評価される銘柄だと考えます。
これらは、技術開発によって技術課題を解決する道筋が見えると、その成果が特許出願されるという前提に立っています。
本サイトでは個々の特許は評価対象にしていません。
本サイトは特許出願件数を指標にして技術を生み出し続ける力(開発力)を評価するものです。
<注意点>
特許出願件数に基づく企業の開発力の評価には以下の問題点がありますので十分にご注意ください。
・単に出願件数が多いだけの企業を過大評価することがあります。
・個々の特許を評価対象としていないので、価値の高い技術や特許を保有する企業を過小評価することがあります。
・現実には開発成果が特許出願されない場合があります。
・対象技術が特許出願された場合であっても、特許検索において情報漏れが生じることがあります。
・特許検索において対象技術との関連性の低いノイズ情報を拾ってしまうことがあります。
・対象技術の市場性や対象企業における影響は別個判断が必要です
(まとめると、ざっくりとした評価であり、間違いもあります、ということです。)
2.特許銘柄の評価方法
2.1 評価対象
タイヤ全般にする技術が対象です。
2.2 特許検索ツール
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
2.3 検索条件
文献種別:国内文献
検索キーワード:
検索項目(ⅰ) FI「B60C」
検索条件:検索条件(ⅰ)
日付指定:出願日 20000101~20231231
3.特許銘柄の評価結果
3.1 期間別の出願件数の推移
2000年~2007年、2008年~2015年、2016年~2023年の3つの区間に分けました。
各期間における総出願人数と総出願件数は以下の通りです(出願人数は筆頭出願人のみカウント)。

出願件数は2008年-2015年がピークの山なり、出願人数は減少傾向です。
各期間の出願件数上位企業は以下の通りです。
(1)2000年~2007年
出願人数921のうちの上位5社の推移です。

上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表1です。
<表1>
| ブリヂストン | 494 件/年 |
| 横浜ゴム | 308 件/年 |
| 住友ゴム工業 | 255 件/年 |
| TOYO TIRE | 92 件/年 |
| ミシュラン・テクノロジー | 44 件/年 |
(2)2008年~2015年
出願人数663のうちの上位5社の推移です。

上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表2です。
<表2>
| ブリヂストン | 526 件/年 |
| 住友ゴム工業 | 381 件/年 |
| 横浜ゴム | 334 件/年 |
| TOYO TIRE | 137 件/年 |
| ミシュラン本社 | 89 件/年 |
(3)2016年~2023年
出願人数600のうちの上位5社の推移です。

上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表3です。
<表3>
| 住友ゴム工業 | 358 件/年 |
| 横浜ゴム | 245 件/年 |
| ブリヂストン | 224 件/年 |
| TOYO TIRE | 183 件/年 |
| ミシュラン本社 | 36 件/年 |
(4)出願上位企業の推移
下の表4は表1~表3をまとめたものです。
<表4>
| 2000年~2007年 | 2008年~2015年 | 2016年~2023年 | |
| 1 | ブリヂストン (494 件/年) |
ブリヂストン (526 件/年) |
住友ゴム工業 (358 件/年) |
| 2 | 横浜ゴム (308 件/年) |
住友ゴム工業 (381 件/年) |
横浜ゴム (245 件/年) |
| 3 | 住友ゴム工業 (255 件/年) |
横浜ゴム (334 件/年) |
ブリヂストン (224 件/年) |
| 4 | TOYO TIRE (92 件/年) |
TOYO TIRE (137 件/年) |
TOYO TIRE (183 件/年) |
| 5 | ミシュラン・テクノロジー (44 件/年) |
ミシュラン本社 (89 件/年) |
ミシュラン本社 (36 件/年) |
3.2 全対象期間での出願件数
下図は全対象期間における出願件数上位10社です。
各期間における出願件数の平均値を結んだ線であらわしています。

ブリヂストン、横浜タイヤの出願件数が直近で減少している一方、住友ゴム工業は直近での減少幅が小さく、TOYO ITREは直近で増加しています。
各期間の平均出願件数を下の表5にまとめました。
全期間におけるトータル出願件数が多い順に上から表示しています。
括弧内のパーセントは他社を含めた総出願件数に対する割合です。
<表5>
| 平均出願件数 | ||||
| 2000年-2007年 | 2008年-2015年 | 2016年-2023年 | ||
| 1 | ブリヂストン | 494 件/年 (30%) |
526 件/年 (29%) |
224 件/年 (17%) |
| 2 | 住友ゴム工業 | 255 件/年 (16%) |
381 件/年 (21%) |
358 件/年 (26%) |
| 3 | 横浜ゴム | 308 件/年 (19%) |
334 件/年 (18%) |
245 件/年 (18%) |
| 4 | TOYO TIRE | 92 件/年 (5.6%) |
137 件/年 (8%) |
183 件/年 (14%) |
| 5 | ミシュラン本社 | 13 件/年 (0.8%) |
89 件/年 (5%) |
36 件/年 (3%) |
| 6 | グッドイヤー | 28 件/年 (1.7%) |
27 件/年 (2%) |
21 件/年 (2%) |
| 7 | トヨタ自動車 | 37 件/年 (2.3%) |
11 件/年 (1%) |
6.0 件/年 (0%) |
| 8 | ミシュラン・テクノロジー | 44 件/年 (2.7%) |
1.3 件/年 (0.1%) |
0 件/年 (0.0%) |
| 9 | デンソー | 20 件/年 (1.2%) |
12 件/年 (0.7%) |
6.9 件/年 (0.5%) |
| 10 | 本田技研工業 | 25 件/年 (1.5%) |
7.9 件/年 (0.4%) |
2.9 件/年 (0.2%) |
次に、上表に示されるデータを上記1の考え方に照らしてみます。
①開発開始時期
いずれの企業も、上記期間での大差はありません。
②開発の継続性
いずれの企業も各期間中に複数の特許出願をしており、継続性に大差はありません。
③開発成果
ブリヂストンの出願件数が最も多く、開発成果があると考えられます。
トータル出願件数は以下の通りです。
<表6>
| ブリヂストン | 9950 件 |
| 住友ゴム工業 | 7956 件 |
| 横浜ゴム | 7100 件 |
| TOYO TIRE | 3290 件 |
| ミシュラン本社 | 1103 件 |
4 まとめ:特許銘柄TOP10
表5に基づく評価は以下の通りです。
①開発の開始時期・・・全10社が2000年-2007年には出願しており、早期から開発していることが推測されます。
②開発の継続性・・・全10社がいずれの期間においても出願しており、継続して開発をおこなっていることが推測されます。
③開発成果・・・ブリヂストンの特許出願件数が最も多く、開発成果がでていることが推測されます。
上記①の観点だと全10社の開発力が評価できます。
上記②の観点だと全10社の開発力が評価できます。
上記③の観点だとブリヂストンの開発力が評価できます。
これらをまとめると以下の通りです。
<表7>
| 出願情報 | ||||
| ①開始時期 | ②継続性 | ③成果 | ||
| 1 | ブリヂストン 【5108】 | 〇 | 〇 | 9950 件 (25.9%) |
| 2 | 住友ゴム工業 【5110】 | 〇 | 〇 | 7956 件 (20.7%) |
| 3 | 横浜ゴム 【5101】 | 〇 | 〇 | 7100 件 (18.5%) |
| 4 | TOYO TIRE 【5105】 | 〇 | 〇 | 3290 件 (8.6%) |
| 5 | ミシュラン本社 【ML】 | 〇 | 〇 | 1103 件 (2.9%) |
| 6 | グッドイヤー 【GT】 | 〇 | 〇 | 612 件 (1.6%) |
| 7 | トヨタ自動車 【7203】 | 〇 | 〇 | 435 件 (1.1%) |
| 8 | ミシュラン・テクノロジー | 〇 | 〇 | 358.0 件 (0.9%) |
| 9 | デンソー 【6902】 | 〇 | 〇 | 309.0 件 (0.8%) |
| 10 | 本田技研工業 【7267】 | 〇 | 〇 | 283.0 件 (0.7%) |
上記①の〇は2000年~2007年に出願が確認されたもの
上記②の〇は出願の継続性が確認されたもの
上記③成果の割合は総出願数に対するもの
5.ご参考
以下、個々の特許出願明細書中の記載などを参考に技術情報を整理しました。
5.1 タイヤの技術や今後の技術課題
見る人によってはタイヤはゴムの塊なのかもしれませんが、上記のように非常に多くの特許出願がなされている技術の塊でもあります。
タイヤがどのような技術要素からなるのか、また、今後の技術課題としてどのようなことが挙げられるのか、まとめました(下表)。
<表8>
| 技術カテゴリ | 構成する要素技術 | 今後の技術課題(EV・次世代対応) |
| 1. 構造・設計技術 | トレッド(溝)、サイドウォール、ベルト(骨格)、ビード | 【重量対策】 EVの重いバッテリーを支えつつ摩耗を抑える高剛性化。 |
| 2. 材料・化学技術 | 天然・合成ゴム、シリカ(低燃費用)、配合剤、接着剤 | 【サステナビリティ】 石油由来からの脱却(タンポポゴム等)とリサイクル。 |
| 3. 静粛・快適技術 | 吸音スポンジ、トレッドパターン設計、振動解析 | 【音の再定義】 エンジン音が消え目立つようになったロードノイズの極限低減。 |
| 4. 知能化(センシング) | TPMS(空気圧監視)、RFID、加速度センサー、発電素子 | 【電源と耐久性】 過酷な回転・衝撃下で壊れないセンサー、電源確保。 |
| 5. 空力・制御技術 | サイドウォールのフィン、車両制御との通信、摩擦推定 | 【電費の追求】 タイヤ周囲の気流を整え、空気抵抗を減らして航続距離を伸ばす。 |
| 6. 次世代形状 | エアレスタイヤ(樹脂スポーク)、大径ナロー化 | 【実用化コスト】 パンクしない空気レスの乗り心地改善、量産コストダウン。 |
5.2 投資妙味(AI予測)
表8の技術カテゴリに関する投資妙味をAIに回答させてみました(下表)。
<表9>
| 技術カテゴリ | 今後の技術課題(EV・次世代対応) | 投資妙味 | 理由 |
| 1. 構造・設計 | 【重量対策】 EVの高荷重への対応 | ★☆☆ | 必須だが、各社横並びで価格競争になりやすい。 |
| 2. 材料・化学 | 【石油脱却】 サステナ素材・リサイクル | ★★☆ | ESG投資の資金流入に直結。独自素材は参入障壁に。 |
| 3. 静粛・快適 | 【音の再定義】 ロードノイズの低減 | ★☆☆ | 差別化要素だが、劇的な利益率向上には繋がりにくい。 |
| 4. 知能化 | 【電源と耐久性】 センサー・データ化 | ★★★ | タイヤを「サブスク」や「サービス」に変える核心技術。 |
| 5. 空力・制御 | 【電費の追求】 サイドウォール等の空力 | ★★☆ | 特定分野で独走できればブランド力が急上昇。 |
| 6. 次世代形状 | 【実用化】 エアレスタイヤ | ★★★ | パンクの概念を消すゲームチェンジャー。 構造特許の破壊力が最大。 |
EV対応(高重量対応)などタイヤそのものの勝負については、あまり評価されていません(タイヤそのものでの技術勝負で面白そうなのはエアレスタイヤの実現くらい?)。
関連銘柄の記事:
<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報
<留意事項>
・本記事は、弁理士である管理人の視点で特許データを独自に分析したものです。
・本サイトでは、特許情報を正確かつ最新の状態でお伝えするよう努めていますが、情報の完全性を保証するものではありません。
・特許情報のご活用や解釈、投資判断などは読者ご自身の責任でお願いいたします。