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【特許銘柄/次世代半導体7】原子層半導体の特許出願動向から選定した主要企業10選

 前々回はGAA構造トランジスタ、前回はCFET構造トランジスタについて取り上げました。

 前々回記事:特許銘柄/次世代半導体5】GAA構造トランジスタの特許出願動向から選定した主要企業10選

 前回記事:【特許銘柄/次世代半導体6】 CFET構造半導体の特許出願動向から選定した主要企業10選

 GAA、CFETという流れのさらの先(シリコンという材料の限界の先)に挙げられるのが原子層半導体です。

 原子層半導体の時代が来た場合に有望な企業はどこなのか?

 特許出願件数から探ってみました。ただし、本検索では、情報ノイズ(特に2000年代)が多く含まれている可能性がありますので注意してください。

 

 結論(簡易版)は以下の通りです。

<特許銘柄TOP10>(2000年-2023年)(非上場を含む)

1 ソウルブレイン 【357780】
2 三星電子 【005930】
3 アプライド マテリアルズ 【AMAT】
4 IBM 【IBM】
5 日亜化学工業 
6 シャープ 【6753】
7 インテグリス 【ENTG】
8 イリノイ大学 
9 サン-ゴバン パフォーマンス プラスティックス 【SGO】
10 サンライズ メモリー 

 ただし、上記結論は特許検索条件などによって変わってくるものです。詳細については下記をご確認ください。

 

 

1.本評価の概要

 本評価は特許情報に基づき、対象技術の開発に関わる銘柄(本サイトでは「特許銘柄」と呼びます。)を客観的に導き出そうとするものです。

 本評価については以下の記事で紹介しています。

【開発力評価メソッド】特許出願に関する情報から技術開発に関わる銘柄を評価

 簡単に説明すると、以下の考え方に基づいています。

開発開始時期:最初の出願が古い→早くから開発に着手(古いほど評価高い
開発継続性:出願が継続→技術開発が続いている(継続するほど評価高い)
開発成果:出願件数が多い→開発成果が出ている(成果が多いほど評価高い)

 すなわち、どこよりも早くから出願され(①)、毎年出願されていて(②)、その件数が多い(③)ほど、評価される銘柄だと考えます。

 これらは、技術開発によって技術課題を解決する道筋が見えると、その成果が特許出願されるという前提に立っています。

 

 本サイトでは個々の特許は評価対象にしていません。

 本サイトは特許出願件数を指標にして技術を生み出し続ける力(開発力)を評価するものです。

<注意点>
 特許出願件数に基づく企業の開発力の評価には以下の問題点がありますので十分にご注意ください。
・単に出願件数が多いだけの企業を過大評価することがあります。
・個々の特許を評価対象としていないので、価値の高い技術や特許を保有する企業を過小評価することがあります。
・現実には開発成果が特許出願されない場合があります。
・対象技術が特許出願された場合であっても、特許検索において情報漏れが生じることがあります。
・特許検索において対象技術との関連性の低いノイズ情報を拾ってしまうことがあります。
・対象技術の市場性や対象企業における影響は別個判断が必要です
(まとめると、ざっくりとした評価であり、間違いもあります、ということです。)

 

2.特許銘柄の評価方法

2.1 評価対象

 原子層半導体に関連する技術が対象です。

 本記事において原子層半導体とは、単一または数層の原子層からなるバンドギャップを有する2次元的結晶構造を有する半導体のことを意図しています。

 

2.2 特許検索ツール

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

2.3 検索条件

 文献種別:国内文献

 検索キーワード:

  検索項目(ⅰ) FI「H01L」

  検索項目(ⅱ) 請求の範囲「原子層」

  検索項目(ⅱ) 請求の範囲「多層」

 検索条件:検索条件(ⅰ) AND 検索条件(ⅱ)AND 検索条件(ⅲ)

 日付指定:出願日 20000101~20231231

 

3.特許銘柄の評価結果

3.1 期間別の出願件数の推移

 2000年~2007年、2008年~2015年、2016年~2023年の3つの区間に分けました。

 各期間における総出願人数と総出願件数は以下の通りです(出願人数は筆頭出願人のみカウント)。

 

 冒頭で少し触れましたが、2000年代の出願と直近の出願では、その発明の内容が異なる(2000年第のものは、直近において活発になってきた原子層半導体とは内容が異なる発明を拾っている)可能性があります。

 

 各期間の出願件数上位企業は以下の通りです。

(1)2000年~2007年

 出願人数42のうちの上位5社の推移です。

 

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表1です。

<表1>

三星電子 1.0 件/年
シャープ 0.5 件/年
IBM 0.4 件/年
メムスカップ 0.4 件/年
パナソニック 0.3 件/年

 

(2)2008年~2015年

 出願人数33のうちの上位5社の推移です。 

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表2です。

<表2>

イリノイ大学 0.4 件/年
日亜化学工業 0.4 件/年
サン-ゴバン パフォーマンス プラスティックス 0.3 件/年
三星電子 0.3 件/年

 

(3)2016年~2023年

 出願人数39のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表3です。

<表3>

ソウルブレイン 1.8 件/年
アプライド マテリアルズ 0.9 件/年
インテグリス 0.5 件/年
IBM 0.4 件/年
サンライズ メモリー 0.4 件/年

 

 

(4)出願上位企業の推移

 下の表4は表1~表3をまとめたものです。

<表4>

  2000年~2007年 2008年~2015年 2016年~2023年
1 三星電子
(1.0 件/年)
イリノイ大学
(0.4 件/年)
ソウルブレイン
(1.8 件/年)
2 シャープ
(0.5 件/年)
日亜化学工業
(0.4 件/年)
アプライド マテリアルズ
(0.9 件/年)
3 IBM
(0.4 件/年)
サン-ゴバン パフォーマンス プラスティックス
(0.3 件/年)
インテグリス
(0.5 件/年)
4 メムスカップ
(0.4 件/年)
三星電子
(0.3 件/年)
IBM
(0.4 件/年)
5 パナソニック
(0.3 件/年)
  サンライズ メモリー
(0.4 件/年)

 

3.2 全対象期間での出願件数

 下図は全対象期間における出願件数上位10社です。

 各期間における出願件数の平均値を結んだ線であらわしています。

 

 平均出願件数は1件前後で、傾向として述べるには件数が少ないです。

 

 各期間の平均出願件数を下の表5にまとめました。

 全期間におけるトータル出願件数が多い順に上から表示しています。

 括弧内のパーセントは他社を含めた総出願件数に対する割合です。

<表5>

    平均出願件数
    2000年-2007年 2008年-2015年 2016年-2023年
1 ソウルブレイン 0 件/年
(0.0%)
0 件/年
(0.0%)
1.8 件/年
(18%)
2 三星電子 1.0 件/年
(14%)
0.3 件/年
(5.1%)
0 件/年
(0.0%)
3 アプライド マテリアルズ 0.1 件/年
(1.7%)
0.1 件/年
(2.6%)
0.9 件/年
(9%)
4 IBM 0.4 件/年
(5.1%)
0.1 件/年
(2.6%)
0.4 件/年
(3.8%)
5 日亜化学工業 0 件/年
(0.0%)
0.4 件/年
(7.7%)
0.4 件/年
(3.8%)
6 シャープ 0.5 件/年
(6.8%)
0.1 件/年
(2.6%)
0 件/年
(0.0%)
7 インテグリス 0 件/年
(0.0%)
0 件/年
(0.0%)
0.5 件/年
(5.1%)
8 イリノイ大学 0.1 件/年
(1.7%)
0.4 件/年
(7.7%)
0 件/年
(0.0%)
9 サン-ゴバン パフォーマンス プラスティックス 0 件/年
(0.0%)
0 件/年
(5.1%)
0.1 件/年
(1.3%)
10 サンライズ メモリー 0 件/年
(0.0%)
0 件/年
(0.0%)
0.4 件/年
(3.8%)

 次に、上表に示されるデータを上記1の考え方に照らしてみます。

 ①開発開始時期

 三星電子、アプライドマテリアルズ、IBM、シャープ、イリノイ大学が2000年-2007年に出願しており、早期から開発をおこなっていたことが推測されます。 

 

 ②開発の継続性

 アプライドマテリアルズ、IBMは上記全期間、日亜化学工業は2期間(2008年-2015年、2016年-2023年)にわたって出願しており、開発を継続していることが推測されます。

 

 ③開発成果

 ソウルブレインの出願件数が最も多く、開発成果がでていることが推測されます。ただし、件数は14件であり、今後順位が入れ替わる可能性も十分にあります。

 

 トータル出願件数は以下の通りです。

<表6>

ソウルブレイン 14 件
三星電子 10 件
アプライド マテリアルズ 9.0 件
IBM 7.0 件
日亜化学工業 6.0 件

 

4 まとめ:特許銘柄TOP10

 表5に基づく評価は以下の通りです。

 ①開発の開始時期・・・三星電子、アプライドマテリアルズ、IBM、シャープ、イリノイ大学が早期から開発していることが推測されます。

 ②開発の継続性・・・アプライドマテリアルズ、IBM、日亜化学工業が継続的に開発をおこなっていることが推測されます。

 ③開発成果・・・ソウルブレインの特許出願件数が最も多く、開発成果がでていることが推測されます。

 

 上記①の観点だと三星電子、アプライドマテリアルズ、IBM、シャープ、イリノイ大学が評価できます。

 上記②の観点だとアプライドマテリアルズ、IBM、日亜化学工業が評価できます。

 上記③の観点だとソウルブレインが評価できます。

 

 これらをまとめると以下の通りです。

<表7>

    出願情報
    ①開始時期 ②継続性 ③成果
1 ソウルブレイン 【357780】     14 件
(8.0%)
2 三星電子 【005930】   10 件
(5.7%)
3 アプライド マテリアルズ 【AMAT】 9.0 件
(5.1%)
4 IBM 【IBM】 7.0 件
(4.0%)
5 日亜化学工業    6.0 件
(3.4%)
6 シャープ 【6753】   5.0 件
(2.8%)
7 インテグリス 【ENTG】     4.0 件
(2.3%)
8 イリノイ大学      4.0 件
(2.3%)
9 サン-ゴバン パフォーマンス プラスティックス 【SGO】   3.0 件
(1.7%)
10 サンライズ メモリー      3.0 件
(1.7%)

 上記①の〇は2000年~2007年に出願が確認されたもの
 上記②の〇は出願の継続性が確認されたもの
 上記③成果の割合は総出願数に対するもの

 

5.ご参考

 以下、個々の特許出願明細書中の記載などを参考に技術情報を整理しました。

5.1 原子層半導体とは?

 上記2.1 評価対象 において、原子層半導体とは、単一または数層の原子層からなるバンドギャップを有する2次元的結晶構造を有する半導体と表現しました。

 

 この原子層は、GAA構造トランジスタやCFET構造トランジスタの内部において、スイッチのON/OFFを制御して電気を流す役割を担うものです

 

 シリコン素材によって形成されたGAA構造トランジスタやCFET構造トランジスタでは、シリコンの厚みによって立体構造(半導体の積上げ)を作るのに限界がありました。

 また、シリコン素材では、薄くしすぎると電気が漏れ出してしまうため、一定の厚みを維持せねばならず、立体構造を作るのに限界がありました。

 

 そこで、原子1層分という究極に薄い素材(原子層半導体)を電気の通り道(チャネル)の材料として採用することで、漏電を防ぎつつ、より複雑で高性能な立体構造を実現しようとしているのです。

 

 つまり、原子層半導体技術というのは、GAA構造やCFET構造と区別される別技術ではなく、GAA構造やCFET構造の進化系技術だと言えます。

 

5.2 原子層の素材

 原子層として使用される素材と採用予測(AI予測)についてまとめました(下表)。

<表8>

名称 構成原子 採用の可能性 実用化に向けた立ち位置・役割
二硫化モリブデン モリブデン+硫黄 CFETチャネルの本命。
n型動作が安定しており最も量産に近い。
二セレン化タングステン タングステン+セレン CMOS回路に不可欠。
二セレン化モリブデンと対になるp型としてセットで採用される。
窒化ホウ素  ホウ素+窒素 標準的な絶縁膜。
半導体ではないが原子層デバイスの土台としてほぼ確実に採用される。
二セレン化モリブデン モリブデン+セレン 高性能化の選択肢。
二セレン化モリブデン以上の性能を狙えるが製造の安定性を研究中。

黒リン

(ブラックフォスフォラス)

リン 超高速動作の切り札。
性能は高いが酸化しやすく量産へのハードルが高い。

 

 上表において採用可能性が大きいものほど、最も市場が大きくなり、勝者が決まりつつある主戦場になるものだと考えることができそうです(投資妙味あり?)。

 

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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報

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