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先端技術に焦点を当て、特許出願数が多くて評価できる銘柄(特許銘柄)を発信中

【特許銘柄/太陽電池3】量子ドット系太陽電池の特許出願動向から選定した主要企業10選

 先の記事ではペロブスカイトなどの太陽電池の開発に関わる銘柄に焦点を当てました。

 先の記事: 

 【特許銘柄/太陽電池2】ペロブスカイト太陽電池の特許出願動向から選定した主要企業10選

 

 今回は量子ドット系太陽電池に焦点を当てて見ていきます。

 量子ドット系太陽電池の有望な企業はどこなのか?

 特許出願件数から探ってみました。

 

 結論(簡易版)は以下の通りです。

<特許銘柄TOP10>(2000年-2022年)(非上場を含む)

1 京セラ 【6971】
2 シャープ 【6753】
3 富士フイルム 【4901】
4 コニカミノルタ 【4902】
5 トヨタ自動車 【7203】
6 メルク パテント 
7 電気通信大学 
8 JSR 
9 東京大学 
10 三星電子 【005930】

 ただし、上記結論は特許検索条件などによって変わってくるものです。詳細については下記をご確認ください。

 

 

1.本評価の概要

 本評価は特許情報に基づき、対象技術の開発に関わる銘柄(本サイトでは「特許銘柄」と呼びます。)を客観的に導き出そうとするものです。

 本評価については以下の記事で紹介しています。

【開発力評価メソッド】特許出願に関する情報から技術開発に関わる銘柄を評価

 簡単に説明すると、以下の考え方に基づいています。

開発開始時期:最初の出願が古い→早くから開発に着手(古いほど評価高い
開発継続性:出願が継続→技術開発が続いている(継続するほど評価高い)
開発成果:出願件数が多い→開発成果が出ている(成果が多いほど評価高い)

 すなわち、どこよりも早くから出願され(①)、毎年出願されていて(②)、その件数が多い(③)ほど、評価される銘柄だと考えます。

 これらは、技術開発によって技術課題を解決する道筋が見えると、その成果が特許出願されるという前提に立っています。

 

 本サイトでは個々の特許は評価対象にしていません。

 本サイトは特許出願件数を指標にして技術を生み出し続ける力(開発力)を評価するものです。

<注意点>
 特許出願件数に基づく企業の開発力の評価には以下の問題点がありますので十分にご注意ください。
・単に出願件数が多いだけの企業を過大評価することがあります。
・個々の特許を評価対象としていないので、価値の高い技術や特許を保有する企業を過小評価することがあります。
・現実には開発成果が特許出願されない場合があります。
・対象技術が特許出願された場合であっても、特許検索において情報漏れが生じることがあります。
・特許検索において対象技術との関連性の低いノイズ情報を拾ってしまうことがあります。
・対象技術の市場性や対象企業における影響は別個判断が必要です
(まとめると、ざっくりとした評価であり、間違いもあります、ということです。)

 

2.特許銘柄の評価方法

2.1 評価対象

 量子ドット系太陽電池に関する技術が対象です。

 

2.2 特許検索ツール

 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat

 

2.3 検索条件

 文献種別:国内文献

 検索キーワード:

  検索項目(ⅰ) FI「H01L H02S H10F H10K」

  検索項目(ⅱ) 請求の範囲「量子ドット」

  検索項目(ⅲ) 明細書「太陽」

 検索条件:検索条件(ⅰ) AND 検索条件(ⅱ) AND 検索条件(ⅲ)

 日付指定:出願日 20000101~20221231

 

3.特許銘柄の評価結果

3.1 期間別の出願件数の推移

 2000年~2007年、2008年~2015年、2016年~2022年の3つの区間に分けました。

 各期間における総出願人数と総出願件数は以下の通りです(出願人数は筆頭出願人のみカウント)。

 

 出願人の数、総出願件数ともに2008年-2015年が最大です。

 先の記事のペロブスカイト太陽電池では時間とともに出願人数、そう出願件数とも増加していました。

 これに対し、上図からは、量子ドット系太陽電池では特許出願に結び付く開発成果がまだ少ないことが示唆されます。

  

 

 各期間の出願件数上位企業は以下の通りです。

(1)2000年~2007年

 出願人37のうち上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表1です。

<表1>

トヨタ自動車 0.5 件/年
プリンストン大学 0.4 件/年
ソレクサント 0.4 件/年
セイコーエプソン 0.3 件/年
ナノソーラー 0.3 件/年

 

(2)2008年~2015年

 出願人数117のうちの上位5社の推移です。 

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表2です。

<表2>

京セラ 4.8 件/年
シャープ 2.6 件/年
富士フイルム 1.9 件/年
コニカミノルタ 1.6 件/年
トヨタ自動車 1.1 件/年

 

(3)2016年~2022年

 出願人数103のうちの上位5社の推移です。

 

 上図の出願件数を企業ごとに平均化したのが下の表3です。

<表3>

シャープ 1.3 件/年
東洋インキSCホールディングス 1.3 件/年
富士フイルム 1.1 件/年
花王 1.0 件/年
電気通信大学 0.9 件/年

 

(4)出願上位企業の推移

 下の表4は表1~表3をまとめたものです。

<表4>

  2000年~2007年 2008年~2015年 2016年~2022年
1 トヨタ自動車
(0.5 件/年)
京セラ
(4.8 件/年)
シャープ
(1.3 件/年)
2 プリンストン大学
(0.4 件/年)
シャープ
(2.6 件/年)
東洋インキSCホールディングス
(1.3 件/年)
3 ソレクサント
(0.4 件/年)
富士フイルム
(1.9 件/年)
富士フイルム
(1.1 件/年)
4 セイコーエプソン
(0.3 件/年)
コニカミノルタ
(1.6 件/年)
花王
(1.0 件/年)
5 ナノソーラー
(0.3 件/年)
トヨタ自動車
(1.1 件/年)
電気通信大学
(0.9 件/年)

 

3.2 全対象期間での出願件数

 下図は全対象期間における出願件数上位10社です。

 各期間における出願件数の平均値を結んだ線であらわしています。

 

 まず、出願件数が1桁と少ないです。

 そのような中で、2000年-2007年から2008年-2015年にかけて少し増加していますが、2016年-2022年にさらに増加させたのは電気通信大学だけです(ただし、1件/年未満というレベルでの増加です)。

 

 各期間の平均出願件数を下の表5にまとめました。

 全期間におけるトータル出願件数が多い順に上から表示しています。

 括弧内のパーセントは他社を含めた総出願件数に対する割合です。

<表5>

    平均出願件数
    2000年-2007年 2008年-2015年 2016年-2022年
1 京セラ 0.0 件/年
(0.0%)
4.8 件/年
(13.1%)
0.6 件/年
(2.0%)
2 シャープ 0.0 件/年
(0.0%)
2.6 件/年
(7.3%)
1.3 件/年
(4.5%)
3 富士フイルム 0.0 件/年
(0.0%)
1.9 件/年
(5.2%)
1.1 件/年
(4.0%)
4 コニカミノルタ 0.0 件/年
(0.0%)
1.6 件/年
(4.5%)
0.3 件/年
(1.0%)
5 トヨタ自動車 0.5 件/年
(8.5%)
1.1 件/年
(3.1%)
0.1 件/年
(0.5%)
6 メルク パテント 0.0 件/年
(0.0%)
1.0 件/年
(2.8%)
0.6 件/年
(2.0%)
7 電気通信大学 0.0 件/年
(0.0%)
0.6 件/年
(1.7%)
0.9 件/年
(3.0%)
8 JSR 0.0 件/年
(0.0%)
1.0 件/年
(2.8%)
0.1 件/年
(0.5%)
9 東京大学 0.0 件/年
(0.0%)
0.9 件/年
(2.4%)
0.3 件/年
(1.0%)
10 三星電子 0.0 件/年
(0.0%)
0.6 件/年
(1.7%)
0.6 件/年
(2.0%)

 

 次に、上表に示されるデータを上記1の考え方に照らしてみます。

 今回は海外企業で占められましたが、日本の出願データのみで評価します。

 ①開発開始時期

 2000年-2007年にはトヨタ自動車が出願しています(最初の出願は2002年)。

 

 ②開発の継続性

 全企業が最初の出願をおこなった期間から継続的に出願しています。

 

 ③開発成果

 全期間では、京セラが最も多く出願しています(表6)。

 ただし、出願件数は2桁と少なく、開発成果を出した企業がまとまった出願をおこなうと順位が逆転するレベルです。

 

<表6>

京セラ 42 件
シャープ 30 件
富士フイルム 23 件
コニカミノルタ 15 件
トヨタ自動車 14 件

 

4 まとめ:特許銘柄TOP10

 表5に基づく評価は以下の通りです。

 ①開発の開始時期・・・トヨタ自動車

 ②開発の継続性・・・全社

 ③開発成果・・・京セラがリード

 トータル的には、開発成果で抜け出している企業がある印象ではありません(出願件数の順位がすぐに変わる程度の差しかないため)。

 これらをまとめると以下のとおりです。

<表7>

    出願情報
    ①開始時期 ②継続性 ③成果
1 京セラ 【6971】   42 件
(7.8%)
2 シャープ 【6753】   30 件
(5.6%)
3 富士フイルム 【4901】   23 件
(4.3%)
4 コニカミノルタ 【4902】   15 件
(2.8%)
5 トヨタ自動車 【7203】 14 件
(2.6%)
6 メルク パテント    12 件
(2.2%)
7 電気通信大学    11 件
(2.0%)
8 JSR    9 件
(1.7%)
9 東京大学    9 件
(1.7%)
10 三星電子 【005930】   9 件
(1.7%)

上記①の〇は2000年~2007年に出願が確認されたもの
上記②の〇は最初の出願から各期間における出願の継続が確認されたもの
上記③成果の割合は総出願数に対するもの

 

 量子ドット系太陽電池については、結局、上記データからは判断しづらいです。開発において、これから何か進展があるのでしょうか?

 

5.ご参考

 以下、個々の特許出願明細書中の記載などを参考に技術情報を整理しました。

5.1 量子ドット系太陽電池とは?

 量子ドット系太陽電池(Quantum Dot Solar Cell: QDSC)は、その名の通り、ナノスケールの半導体結晶である「量子ドット(Quantum Dot: QD)」を光吸収材料として利用した次世代太陽電池です。

 基本的な構成要素は他の太陽電池と類似していますが、その核となる「光吸収層」に量子ドット(ナノメートルサイズの半導体微粒子)が用いられる点が特徴です。

 ヘテロ接合型と言われる構造の場合、従来の太陽電池を構成するn型半導体とp型半導体の間に量子ドットが配置された構造としてイメージされます(参考:下のリンク先)。

 従来の太陽電池:東京電力HP関西電力HP産総研

 量子ドット太陽電池:応用物理学会

 

5.2 量子ドット系太陽電池のメリット・課題

 以下のようなメリットがあると言われています。

・高い理論変換効率

 量子ドットの特性により、太陽光のより広い波長範囲を効率的に利用できるため、従来の太陽電池よりも高いエネルギー変換効率が期待されています。

・吸収波長の制御

 量子ドットのサイズ調整により、吸収する光の波長を制御でき、さまざまな設計ができます。

・多接合化の容易性

 異なるサイズの量子ドットの積層により、効率的な多接合太陽電池を比較的容易に実現できる可能性があります。

・低コスト製造の可能性

 溶液プロセスなどを用いた低温・低コストでの製造が期待されています。

 

 一方、以下のような課題があると言われています。

・実用レベルの変換効率の実現

 理論的なポテンシャルは高いものの現状の実用的な変換効率はまだ従来の太陽電池に劣る場合があります。

・量子ドットの安定性と耐久性

 量子ドット材料の長期的な安定性や耐久性に課題があります。

・毒性のある材料の使用

 一部の量子ドット材料にはカドミウムなどの毒性元素が含まれているため、環境への配慮が必要です。

・製造の均一性と制御

 ナノスケールでの均一な量子ドットの形成や配置には高度な技術が必要です。

 

5.3 従来の太陽電池との比較

 従来のシリコン系太陽電池と比較してみました。

特徴 量子ドット系太陽電池 従来の太陽電池(シリコン系)
光吸収の仕組み 量子サイズ効果により吸収波長を制御可能 半導体のバンドギャップによって吸収可能な波長が決まる
理論変換効率 高い(70%以上との報告もあり) 比較的低い(単接合型で理論限界約30%)
材料 硫化鉛、セレン化カドミウム、リン化インジウムなど シリコン
構造 量子ドットを感光層や中間層として利用 PN接合を基本とする
製造 液相プロセスなど、低温・低コスト製造の可能性 高温・真空プロセスが必要
応用 高効率太陽電池、フレキシブルデバイスなど 住宅用、発電所など

 

 理論変換効率では量子ドット系太陽電池が優れている印象を与えますが、実用レベルではまだシリコン系太陽電池を凌駕しているとは言えないようです。

 特許出願においても、現時点では大量に出願されているようには見えませんし、本格的な実用化までにはまだ時間を要すると考えた方がよさそうです。

 

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<出典、参考>
・特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)にて公開されている情報

 

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